近づけばおぼろげに揺れる

君と見たいスペクタクル

暗澹たるラブソング~Hey! Say! JUMP「モノローグ」の歌詞が深すぎる

皆さま、お久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。

11月24日発売のHey! Say! JUMPの新曲「Sing-along」のカップリング「モノローグ」が、初聴の時点から「これはエグイ曲だ、、」という確信を持ったのでいつもの通り(?)解釈をしてみました。毎度のことながらこれは私という1オタクの1解釈であり、この解釈が正解なわけでも、読まれた皆さまが初めてこの曲を聴いた際に感じられたものを否定するわけでも一切ございません。...と、前置きはここまでにして早速本題に。

私はこの曲を初めて聴いた際に引っかかったのは、この歌詞には「あなた」「君」「僕」と3つの2人称が使われていること。そして、それを基に歌詞を読んでいくと、どうやら一人称「僕」を名乗る人物は曲中に2人いるらしい(でないと辻褄が合わない)ということ。

一人称「僕」を使用する女性や、その他さまざまな性自認の方の可能性もありますが、便宜上ここでは一人称「僕」を使用しているのは以下「男A」「男B」としています。

何もしたくないような平日は

あなたと踊る夢を見るわ

「つまらない」と

笑って一人で雨に濡れるのも悪くない

ここは男Aのモノローグ。「あなた」=男B の夢を見るなんて「つまらない」と自嘲的に笑う男A。ちなみに、「何もしたくない」は後ほど重要なキーになっていきます。

悲しみ そっと目を向け

君の前では笑ってる振りをして

やめて欲しい言葉うざい

君の全てに溺れ酔いしれた

ここは男Bのモノローグ。「君」=男A への想いを隠している男B。「やめて欲しい言葉うざい」はやや口が悪そうな男Aの言葉(そこさえも好きになっている)なのか、同性どうしの恋愛に向けられる冷たい言葉や視線に対する男Bの心内語なのか。

涙をそっと数えた

あの星空のことも忘れたの

すれ違いだって離さない

わかっていた もうわかっていたでしょ

男Bから男Aへの片想いと思いきや男Aも男Bのことが好きだったのか。「涙をそっと数えた あの星空のことも忘れた」と強がり、運命はすれ違いから離してくれず、「わかっていた もうわかっていたでしょ」と自分に言い聞かせている。男Bは他に恋人を作ってしまったのだろうか。

ねえねえ君はもっと

僕の傍に来てずっと

話をしていたいの

もっと近寄って もっと近寄って

「友人」として至近距離で仲良くしながら(戯れながら?)、心に秘めた想いを抱える男B。男Bのほうが男Aに向ける矢印が強いのかと思っていたけど、男Aのモノローグと比べると男Bの抱える想いのほうが純粋で無邪気な印象を受ける。

「つまらない」と嘆いてたのに

どこかに行かれると困るしで

あなたのこと わかってあげられなかった

全部僕のせい...

ここで時間軸がはっきりわかってきた。

最初の男Aのモノローグは「過去」。男Bのモノローグはどれも「過去」。男Aのふたつ目以降のモノローグは「現在」。

男Aは、過去に男Bが抱えていた(もしかしたら告白もされたのかもしれない)想いを「わかってあげられなかった」。男Bの夢を見るほど平日いつも一緒に過ごしているなんて、男女交際を伴うきらきらとした学生生活と比べてなんと男くさくて「つまらない」と笑っていたのに、いざ「どこかに行かれると」困って、「全部僕のせい」と自分を責めている。学生と断定したのはAメロの「平日」と、男Aと男Bとの関係性に垣間見える青さから。私は最初これは男Bが他に恋人を作ってしまったのかと思っていたけど、もしかしたら死別なのかもしれない。それも、病気や事故ではない、死別。

すると、ここまでの男Aのモノローグの意味ががらっと変わってくる。

「涙をそっと数えたあの星空」はひとりで泣いていたのではなくふたりで星空を前に泣いていたとき(泣いていたのはふたりなのか、泣く男Bに男Aが寄り添っていたのかはわからないけど)の思い出を振り返っていて、あの星空での出来事を忘れたのか、その頃からもう男Bの想いには気付いていたんじゃないかとまた自らを責めている(「わかっていた もうわかっていたでしょ」)。

その次のブロック「言いたいことも言えなくて」~「目が合うと逸らすの」は男Bのモノローグ。もちろんここも過去。男Bのモノローグはすべて過去。

綺麗な靴をあげよう

期待外れの言葉も捨てちゃって

二人きりで逃げよう

辛いことも忘れ永遠を願おう?

ここは男Aのモノローグ。「綺麗な靴をあげよう」。同性の友達の誕生日プレゼントにスニーカーをあげる男子といった例を浮かべるとごく自然だろう。「おまえいつも汚い靴履いてんな、今度の誕生日に綺麗な靴やるよ」そんなやり取りをしたのかもしれない。

ところが、靴はずっと一緒にいたいと思っている好きな人や恋人には贈らないほうが良いとされている。なぜか。靴を贈ることには「私を置いて去って」「私の元から去って」という意味があるからだ。男Aは、過去自分が軽い気持ちで発した「綺麗な靴をあげよう」という言葉は「あなた」にとっては「期待外れ」、傷つけただろうなと振り返って思って、「捨てちゃって」=その言葉を取り消して、「二人きりで逃げよう」と時を経て言い換えている。もう動かない男Bを前に、「二人きりで逃げよう 辛いことも忘れ永遠を願おう?」と語りかけている。後追いしようとしているのだろうか。

「何もしたくない」「変わりたくない」

「何もしたくない」「関わりたくない」

「何もしたくない」「代わりはいらない」

「何もしたくない」「傍にいたいよ」

「何もしたくない」とそれに隠された意味が繰り返されるこの部分。「何もしたくないような平日」にふたりがそれぞれ何を思っていたのかが明かされる。

男Bの「変わりたくない」と男Aの「関わりたくない」は建前(嘘)。関係性が変わるのが怖くて「変わりたくない」と呟いた男Bの本心は「(Aの)代わりはいらない」=男Aだけを愛している。男Bからの好意に薄々気が付きながらも「関わりたくない」と無視していた男Aの本心は「傍にいたいよ」。そしてここで注目したいのは、すべてソロパートでの掛け合いだったにも関わらず最後の「傍にいたいよ」だけユニゾン(おそらく2人?)なのだ。つまりこれは、男Aと男Bのふたりともが持つ本音だったのではないか。それを踏まえて聴く「傍にいたいよ」は、あまりに痛ましい魂の叫びに聞こえる。

「どうして?」

動かなくなった男Bを最初に目にしたときの男Aの一言なのか。それとも、男Bの死から幾らか経った後に過去を振り返って呟いた一言なのか。

ねえ!

やはり、目を覚ましてほしいと願ったときの一言か。

「ねえねえ君はもっと~もっと近寄って」までは男Bのモノローグ、「つまらないと~」以降は男Aのモノローグというのは先の通り。ただ、最後、これまでの男Aのモノローグとは違う点がある。

全部「僕のせい?」

1番のサビでは「全部僕のせい」で男Bが命を絶ったという自責だったけれど、ここでは「僕のせい」だけがセリフを意味する鍵括弧がつき、疑問符で〆られている。男Aが今更「本当に自分のせいで死んだのかな?」と疑問を抱きはじめたとは考えにくいので、ここは男Bの言葉を男Aが回想しているのだと解釈した。それが男Bの最期の言葉だったのか、そうではないシーンでの言葉なのかはわからないが、その言葉が男Aの脳裏にずっとこびりついているのだろう。

 

いや本当に後味が悪い。だがしかしオタクのありとあらゆる癖(ヘキ)をぶっさしてくる名曲、、

これはふたりの男性とひとりの女性の三角関係で、男Bと想いが通じながらも男Aと結婚した女性を男Bが連れ去る話なんじゃないかとかいう仮定もして考えてみたんですが、どうにも辻褄が合わないというか、しっくり来なくて。その点今回紹介した解釈だとラブストーリーでありながら(過去の)男Bから男Aへの想いも、(現在の)男Aから死んでしまった男Bへの想いもどちらも一方通行で「モノローグ」だなあと感じて筆を起こしました。ただ、言葉遣いが少し女性的(っていう言葉いまどき嫌だなあ、、「たをやめぶり」って言えばいいかな?笑)なのもあって男女の話とも捉えることができるのが巧いし、こう解釈するとあまりに悲しい話だから一種のオブラートに包んでいるともいえるのかなと。

いろいろ書きかけのネタがあるにもかかわらずすべてすっ飛ばして勢いで当エントリを書いてしまうくらいには、初聴のときからビビっときて、噛めば噛むほど味が出る名曲でした。どうか、どうか、どうか、

セトリ入りしますように!!!